こっち気付いてくれないかなー。なんて、そんなことを思いながらそわそわしていると、彼氏くんとばちりと目が合った。
「あ、っ……」
「ねーえ、聞いてる?」
勇気を出して声を出してみたものの、そんな私の声は彼氏くんの隣に張り付いている女の子の大きな声にかき消されてしまって。
彼氏くんはちらっとこちらを見たものの視線を逸らして、その女の子の方を見る。
「……なんだっけ」
そっけないものの確かにそんな返事を返す彼氏くんの腕に女の子が自分の腕を絡めた。
……こちらに向かって見せつけるように。
気のせいかもしれない、けど。
なんだか、すっごく…………やだ。
思わずぎゅっと胸元を握りしめていると、女の子が甘ったるい声でまた彼氏くんに話しかけていた。
「だっからぁ、杏奈、チョコ作ってきたんだってば。貰ってくれるよね?」
「……っ!」
チョコ。
私だって渡してないのに。……まだ。
彼氏くんは、貰うのかな。杏奈、ちゃんにチョコ。
そもそも今日がバレンタインデーって知ってるのかもわかんないけど。


