「走ったら追いつくかと思ったけど、夏生の家に着いちまったな」



インターホンを鳴らしたが、誰も出ない。



どうやら、まだ帰宅していないようだ。



「どこに行ったんだ?」


受験勉強に時間を割きたいところだが、どうせこんな状態じゃ家に帰っても集中出来ないだろう。




早い所、夏生を見つけ出したい。




「夏生の行きそうな所、行きそうな所か」



最近の夏生はこのゲーム一筋だった。



もしかして、このゲームにヒントが隠されていたりして。



「……まさか」




不安になって、慌ててゲーム機を起動させる。




ゲームのタイトルは【るーぷ】



登場する絵本の名前をそのままタイトルにしたようだ。





夏生のプレイ記録は、第四章!?





昨日の朝の時点で第一章、放課後に怖くなって帰れないと言い出して、その夜にもう一度プレイしたと言うのか?



最終プレイ時間 2:32




「これ、総時間数だよな」



つまり、第一章を終了するのに仮に一時間掛ったと仮定しても、さらにそのあとにプレイしたという計算になる。




「怖がってたのに、まだやる気でいたのか」



確かに今朝はまだやる気があった。




だけど、それは『怖いから一緒にプレイしよう』という意味だと思っていたんだ。



だけど、昨日帰宅してから、夏生は一人でプレイしている。



そして、現在、行方不明。



「確かゲームの内容は、自分の影との追いかけっこだったな」




※注意事項




「ん?なんだ、これ。注意事項?」




※このゲームに一度参加すれば、基本的に二度と現実世界には戻れません。別れを惜しむ人間がいれば、その人に会うためだけ、一度だけ元の世界に戻ることを許可します。制限時間は24時間です。





その貴重な時間をいつ使うかは、プレイヤーである貴方次第です。




「……なんだよ、コレ」