「未練、たらたら」
蒼井さんの墓の前で微笑ましく笑い合う、
────────哀れな家族。
蒼井さんとは正反対で、菜緒さんは自己中心的な女の人だ。
旦那も、息子も可哀想だな、と思う。
俺には、関係ないけど。
あの日、俺が蒼井さんに助けられた日、蒼井さんは死ぬ間際俺にある手帳をわたした。
その手帳は日記だった。
そこには、蒼井さんが菜緒さんのことを本当に愛しているかを疑問に思っているようなことを書いていた。
それを見て、本当に不躾で最低な考えだけど、彼女を愛したまま死んで、よかったのではないか、と思った。
俺には口を出す資格もなにもないけど。
END