────ピンク色のカーディガンを羽織り、白いワンピースをはためかす彼女は、僕に微笑んだ。


「ねえ、あおくん」


風に靡(なび)く茶色の髪を抑えながら、彼女は僕の名前を呼んだ。


蒼井 青(あおい せい)、それが僕の名だ。

蒼井青、あおあお続くからと彼女が名付けてくれたあだ名。

“あおくん”というあだ名は僕はとても気に入っていた。


「あおくん。久しぶりだね」

「久しぶり、菜緒(なお)」


桂木 菜緒(かつらぎ なお)、それが彼女の名だ。

菜緒は一言でいうと、美人。

僕には勿体無いくらいの美人だ。


僕と菜緒は、元恋人同士だ。


僕は菜緒が好きで、菜緒も僕のことが好きだ。


でも、別れた。別れてしまった。



「あおくん、私、毎日たのしくない」


「そんなことはないでしょ」


「あおくんがいないと楽しくないの」



あっ、と思った時には彼女は涙を流していた。