【短】旅立ちの日に




それから、自分は父親と母親に敬礼をし、彼女に敬礼をしてから、戦場へと足を進めていった。


振り返らなかった。



背後でいつまでもみてくれる彼女の激情が移って、戻ってしまいそうだったから。


彼女は膝から崩れ落ちたのが見ずともわかった。


恐らく父親が支えていらっしゃるのだろう。


魂を震わせて泣く彼女の声が、風に乗ってきこえてくるような気がした。


こんなにも泣かせてしまったことがとても悲しくて情けなくて。