二番艦の建造は大幅に遅れ、まだ船体しか出来ていない。理由は他の艦船の建造や修理を優先したためだった。
樫原中将達の意見でブロック工法、電気溶接を採用し、もっと早く完成するはずだった。

物資も調達出来そうにない。建造中止になりかけた時……

「防空戦艦というのはどうでしょう?」

「防空戦艦!?」

物資も調達できそうにないのに、実用性が無さそうなことを言った。とうとうおかしくなったのかと誰もが思った。
冗談を言っているわけではないらしい。自信ありげな顔だった。

「戦艦を?」

「はい、十四号対空電探を設置し対空兵装を近江よりも強化します。狙ってくる敵機を撃墜していくのです」

あきれた。こいつは反省していない。

「流石に今回は聞き入れん!それに、どうやって物資を……」

「知りあいにつてがあります」

今は何もかも足りないというのに、本気で言っている。

そうだ、ここで失敗すれば橿原を更迭できるのではないか?伯澤はひそかに笑う。

「やってみろ」

「伯澤大将!」

「どうせ建造中止に決まった艦だ。それに、何を言っても聞かんだろう」

橿原はありがとうございますと笑顔で言う。あの伯澤大将が折れた……そして、橿原が訳のわからない事を本気で実行しようとしている。
不気味な日だと誰もが思った。