エキストラなのに、何か台詞を言うのかな。

でも、食事していれば良いと言っていたしな、、、。

俺は、状況がわからず固まっていると、入口からいかにもヤクザ風の男が二人入ってきた。


役者にしておくにはもったいないほど、本職のようにみえる。


男たちは、店内を見回すと、俺と目があった。

俺は目をすぐにそらしたが、遅かった。


つかつかと俺の席にきて、娘の肩を掴んで叫んだ。

「この男が、おまえの浮気相手か?」

「ち、違うわよ」


俺は最初の話と違うと思いながらも、迫力のある演技に見とれていた。



「何見てやがる。おとしまえは取るぜ」

そういうと、拳銃を取り出して俺に向けた。


良くできている小道具だ。

本物ソックリ。


「組長の女に手を出すとは、怖いもの知らずな奴だ」

そう言って、引き金を引いた。


音まで、本物、、、、


って、俺の胸に、、、


血がハンバーグに飛び散った。


ケチャップみたいだ、、、


そういえば、まだハンバーグ一口も食べてない、、、

左手に握りしめたフォークの先のハンバーグが、揺れている。


そう思いながら、気が遠くなっていった。




「まいりましたね、監督。撮影中に銃撃事件が起きるなんて」

「いや、本物のシーンが撮れたんだから、使うか」

「無理ですよ、我々が撮ろうとしていたのは、青春ドラマなんですから」

「そうだな。死体が片付いて、警察が帰ったら撮影続行だ」