庭にある水道の前に彼は座り込んでた。
 私も同じようにして目の前にしゃがんだ。
 膝の傷がちょっと痛いけど……。


 「ティッシュ、あと絆創膏」


 と水を出しながら彼は手を差し出してくる。
 スカートのポケットからティッシュと絆創膏を取り出して彼に「はい」と渡すと「ん」と言って取られた。

 ティッシュを一枚取って水に浸すと、私の膝の怪我にポンポンとし始めた。
 ティッシュがどんどん滲んだ赤で染まっていく。
 

 「痛ったっ……」
 「もう終わるから」


 痛さに顔を顰めるが、たった一言だけで片付けられる。
 ──だけど、なぜかその“たった一言”に安心できる自分もいた。