明るい月
満開に近い、薄桃色の桜
外の空気がわかるのか
赤ん坊は一瞬だけ、泣くのをやめた
「お前さあ…
牛だってヤギだって
産まれたらすぐに
自分で立って、乳飲むんだぞー」
…こいつに言っても しかたないけど
「…あ」
―― もしかして、具合 悪いのか…?
そうかもしれない
顔、真っ赤だし
… 医者
こんな時間じゃ、救急しか開いてないか
明日まで待って…って仕事あるな
最終手段としては、仕事場に
連れていく事も出来るけど…
…泣くからなあ
これからは編集作業で
皆 少し、いらつく時期
集中だって 出来ないだろう
「 あ!」
携帯
急いでその人の、番号を押す
何で忘れてたのよ
知り合いに、医者がいる
「―― って、留守電かよ!」
それから何度か
その番号を押してみたけど
やっぱりずっと、留守電が続いた
…なんか、タイミング悪いなあ
こういう時って
俺 続くんだよな
ボタン、掛け違えたみたいな
馴染みの犬にまで吠えられるし…
しかもその理由は
たいてい自分に、原因があって
誰も責められないから
余計に、いらつくんだ
「…ああああ!!
やっぱり助け、借りなきゃダメか…」
なるべくなら
避けたかった
だけど、信用出来る奴じゃないと
やっぱり さ…
"信用出来て、金も余裕もある
こういう事にも、対処出来そうな男"
本当は、一番最初に
頭に浮かんでいた相手


