いつもと同じ朝。いつもと同じ時間。

こんな日常を退屈だと思うのは、多分私以外の全員だと思う。私は退屈だなんて思わない。

なぜなら、私はそもそも”朝なんて来なければいいのに”と思っているからだ。
朝は嫌い。低血圧だし、ダルいし、眠いし、すぐに登校の時間になってしまうから。朝も学校もなければいいのに。

そんな私の思考を停止させるべく、下の方から私の名前を呼ぶ声が響いた。


「冬香ー、起きたー?」
「起きたー!今行くー」


一階から聞こえるのは、私のお姉ちゃんである春香の声。

お姉ちゃんは高校2年生で、私と3歳の差がある。
母は大体、朝早くから夜遅くまでの仕事。父は離婚済み。
私が小学校の時、父の浮気が原因で離婚したらしい。


まあ、そんなことはどうでもいいのだ。


私はゆっくりと布団から起き上がり、制服に着替えた。

中学の制服はセーラー服。
校則はゆるい方で、少しぐらいスカートの丈を短くしても怒られないし、隠れてピアスをしている生徒だっている。

私もスカートを何回か折って膝上ぐらいの長さにしたあと、髪を梳かして少し上の方でポニーテール。


全身鏡の前に立って自分を見つめ、どっからどう見ても普通の中学生だと思いながら憂鬱な気分になる。


下におりると、もうお姉ちゃんが登校する時間らしく、お弁当を鞄にいれていた。

「じゃあ、私行くね。戸締まりちゃんとすんのよー?」
「わかってるってー。行ってらっしゃーい」


そう言うと、すぐに扉が閉まるバタンという音が聞こえた。

私もそろそろと思い、鞄の中に教科書やノートを入れて学校に行く準備する。朝は大体食べない派だから、テーブルの上に置いてあるビンの蓋を開けて、中からいちご味の飴玉を取り出す。

それを舐めながら、私は鞄を持って玄関に向かった。


「…行ってきまーす」