いつしか窓の外は景色が変わり、新しく大きな建物が並ぶ学問街の東区に入っていた。
「あれだ。」
次第に視界に入った区立大図書館の姿、馬車が止まると栢木は走って図書館に向かった。
しかし既に灯りは落ちて図書館は閉館している。
入り口の扉に手を当てて中を覗いても誰もいる気配が無かった。
「いないか…。」
それはそうだ、閉館した建物の中に居る訳がない。
そう呟くとすぐに走りだした。
まだきっと近くにいる、この近くのどこかに北都がいる。
「北都さん。」
どこにいるのか、声にしても心の中でも何度も北都の名前を呼んだ。
街を走る栢木の手には北都の上着があり、強く握り締めるあまり皺が付き始めていた。
周りを見逃さないように目は常に北都の姿を追っている。
それでも、見つからない。
夜は更けていき人の姿もまばらになっていった。
どれくらい走っただろう、馬車を待たせている場所から結構離れてしまった気がする。
「どうしよう…。」
息も荒くついに膝に手を突いて体を屈めるほどに体力を失っていた。
何とも言えない虚しさに似た感情が少しずつ侵食していく。
また勝手にしてしまった期待に振り回されているだけなのだろうか、そんな侘しさが目を熱くして潤いをもたらした。
「あれだ。」
次第に視界に入った区立大図書館の姿、馬車が止まると栢木は走って図書館に向かった。
しかし既に灯りは落ちて図書館は閉館している。
入り口の扉に手を当てて中を覗いても誰もいる気配が無かった。
「いないか…。」
それはそうだ、閉館した建物の中に居る訳がない。
そう呟くとすぐに走りだした。
まだきっと近くにいる、この近くのどこかに北都がいる。
「北都さん。」
どこにいるのか、声にしても心の中でも何度も北都の名前を呼んだ。
街を走る栢木の手には北都の上着があり、強く握り締めるあまり皺が付き始めていた。
周りを見逃さないように目は常に北都の姿を追っている。
それでも、見つからない。
夜は更けていき人の姿もまばらになっていった。
どれくらい走っただろう、馬車を待たせている場所から結構離れてしまった気がする。
「どうしよう…。」
息も荒くついに膝に手を突いて体を屈めるほどに体力を失っていた。
何とも言えない虚しさに似た感情が少しずつ侵食していく。
また勝手にしてしまった期待に振り回されているだけなのだろうか、そんな侘しさが目を熱くして潤いをもたらした。



