陽だまりの林檎姫

それは講演会の広告。

栢木の目は広告に釘づけになり、頭の中では様々な情報が出し入れされていくのを感じていた。

勘が働いている。

思い返せば北都が出掛ける時は2つパターンがあった。

馬車を連れて行くときと乗り換えるとき、連れていく時は大抵貴族の屋敷やもとより予定されている講演会や発表会だった覚えがある。

そして連れていかない時は。

「新聞の広告…っ？！」

そう叫んで勢い良く新聞を広げた。

北都が行きそうな場所は、イベントは、懸命に目を走らせ捜し当てる。

「あっ！」

思わず声が出た。

視線の先にあるのは特別書物の開放日と書かれた区立大図書館の広告だ。

確信めいた手がかりがある訳でもないのに妙にこの広告が惹き付けてくる。

これだと、栢木の勘がそう言っていた。

「東区…。」

もうこれしかない。

住所を確認すると勢い良く箱から飛び出し御者のダンに迫った。

「ダン！ごめん、今から東区立大図書館に向かって！」

完全に勘だった、それでもそこに北都がいる気がする。