陽だまりの林檎姫

そんな日が何日も続いてしまうと流石に嫌な予感がして仕方がない。

「どうしよう、良くないな。」

鏡の中の自分を見つめ思わず出てしまった、吐きたくもないため息に空気も重たくなる。

しかし朝が来た、一日はもう動き出しているのだ。

栢木は動きの鈍い手足を動かして普段の倍近い時間をかけながら支度を始めた。

一歩外に出れば仕事は始まる。

扉の前に立ちため息に似た深呼吸をすると、扉に手をかけて栢木は部屋を後にした。

「おはよう、栢木。」

「おはよう。」

一階に下りれば朝早くから働く仲間が明るい笑顔で声をかけてくれる。

手を振り挨拶を交わして食堂に向かうのがいつもの流れだった。

しかし食事を取って席についても食欲がわかない。

フォークで食べ物を遊ぶように触るだけで口には運ばなかった、運ぶ気にもなれなかったのだ。

「栢木。どうしたの？」

呆っとしていつもと違う様子の栢木を心配したマリーが近寄ってきた。

「元気がないようだけど…。」

「そう？寝起きだからかな。」

何でもないフリをして笑う姿は見え見えな強がりだったのかもしれない。

マリーの心配は少しも晴れず、それどころか余計に気にさせた。

「ちょっとゴメンなさい？」

そう言ってそっと栢木の頬に手を伸ばしてあてる。

少し冷たくも感じたマリーの手が優しくて温かい気持ちになった。