陽だまりの林檎姫

応援団の様に手を振るマリーに見送られながら馬車に乗り込んで屋敷を見上げた。

「…お世話になりました。」

そして栢木は久しぶりに実家である栢木邸へと向かったのだ。



*
あれからもうすぐ1ヵ月が経とうとしている。

相麻邸の馬車が栢木伯爵家に着いた頃にはさすがのダンも疲労の色を隠せなかった。

「ありがとう、ダン。すぐに部屋を用意させるからここで待ってて。」

「ああ、頼むよ。」

背もたれに体を預けたダンが力なく片手を上げる。

相麻の屋敷よりも大きな栢木邸は白を基調とした石造りの豪邸で歴史を感じさせる建物だった。

ロータリーで停まった馬車を見るなり何十人もの使用人が出迎えに列をなして頭を下げる。

その中で一際背の高い中年の女性が栢木の前に現れた。

「お嬢様!!」

「トキ、久しぶりね。」

「ああ、お嬢様。よくぞ無事にお戻りになられました!!ささ、旦那様がお待ちです。」

「トキ。御者のダンよ。私をここまで連れてきてくれたの、部屋に案内して休ませてあげて。」

「勿論ですわ。」

トキは近くに居たメイドにキツイ表情で指示を出すと栢木の手を取って中へと招いた。

「お荷物をお運びしなさい。馬車の手入れを!馬も休ませるのよ!」

エスコートしながらも次々と厳しい口調で指示を投げる様子は相変わらずだ。

トキ女史の通り過ぎる声を聞きながら栢木は懐かしさを噛みしめた渋い顔でタオットの待つ書斎へと向かった。

家を出てからどれくらい経ったのだろう。

見慣れた筈の景色が全て新鮮に感じて勝手に心が弾んでいく。