陽だまりの林檎姫

栢木の為だけじゃない、北都の為だけじゃない、自分たちの願いを叶える為にもこの思いを受け止めてほしいとマリーは訴えていた。

胸が熱い。

北都はこのマリーの思いを知っているのだろうか、栢木はふとそんなことを思って微笑んだ。

きっと知らないだろう、だからこそ伝えたい。

「分かった。任せて。でも流石に馬車は無理よ、どれだけ時間がかかるか分からない。」

「構わないさ。適度に休みさえくれれば出来る話だ。」

「あはは、ダン。元気は良いけど本当に辛い話よ?」

「やれるだけやらせてくれ。」

ダンの気持ちも伝わって少しくすぐったい気分だ。

栢木は少し考える様に視線を下げると、意を決して顔を上げ頷いた。

「ありがとう。じゃあ、お願いする。いきなり最初は遠いけどいいかしら?」

「どこか宛があるの?」

「ええ。まずは私の実家に向かう。」

「栢木の実家?」

声を合わせて尋ねた2人に栢木は微笑んで頷く。

「ウエストミンタ地方の栢木伯爵邸へ。」

少しの間をおいてまた2人の声が驚きの悲鳴となって重なった。

行先の迫力とその距離にダンは渋い顔をして唸り声をあげる。戸惑いながらも励ますマリーに可笑しくて笑ってしまった。

「栢木、貴女…品がいいとは思っていたけど。伯爵令嬢なの!?」

突然の告白に問いたいことは沢山あるが、現状を思い出してマリーはぐっと堪えることにした。

ダンに報告に来るよう願い、時間が惜しいと栢木の荷物を馬車に詰め込んだ。

「ミライに宜しく伝えてね。」

「ええ。確かに伝えておくわ。いってらっしゃい!」