「ああああああーーーーー…。」

息の続く限り嘆き声をあげると栢木は布団に顔を埋めた。

しかしやってしまったものは仕方がない。

昨夜の自分を後悔するだけしたら、すぐにベッドから起き上がり着替えを始めた。

今日はいつも着ているスーツにしよう。

今のバタバタした自分に特別なスーツは相応しくない、それでは北都にも失礼な気がしたのだ。

急いで昨日の化粧を落として普段どおりの自分に戻る。

「やっぱ女は化けるのね。」

他人事のように呟いて前髪を掻き上げた。

鏡に映る自分、何がきっかけか髪に触れた北都の指の感触を思い出して顔が赤くなる。

そしてその後の唇が合わさった感触も思い出されて指を当てた。

多分、あれは夢じゃない。

恥ずかしさを紛らわすように何回も手櫛で髪をとき平常心に戻そうと必死に試みた。

しかしすぐに思い出される昨夜の記憶に自然と手の動きは遅くなっていく。

いつもと違う雰囲気、いつもと違う姿、いつもと違う優しい眼差し。そして心を震わせる言葉に栢木は完全に溶かされていた。

しばらくは何をされても、それを思い出してペースを乱されるだろう。

北都の作戦にしてやられた自分にまた反省、赤と青の表情を繰り返しながら少しずつ支度を終えていった。

昨日は北都も疲れた筈だがもう起きて動いているのだろうか。

少し早めだがとりあえず朝の見回りも兼ねて下に行くことにした。

しかし扉を開けていつもと違う様子に気が付く。

部屋の中にいる時は分からなかったが、外に出た瞬間にいつにない騒がしさを感じて首を傾げた。

誰もがもう活動をしていたのだ。

「え?何事?」