「ダン…気を付けて。」

栢木のことを思うとそう手を振るのが精一杯だ。

遠ざかっていく馬車の姿に重なるのは栢木の嬉しそうな姿、あの笑顔が頭から離れない。

「ミライ、中に入りましょう。」

「マリーさん…。」

もう既に馬車は見えなくなっていた。

マリーの瞳にも悲しみが宿り、ミライは不安な気持ちが膨らんでいくのを感じてしまう。

栢木はまだ戻って来ない。

まるでこれが2人の分かれ道の様な気がしてミライは唇を噛みしめた。

それはマリーも同じ気持ちだった。