陽だまりの林檎姫

頼まれた仕事を次々とこなしていくと、いつの間にか1日は終わる。

雑務もこなしつつ今日もいい仕事をしたと自分を労いながら自室の窓を開けた。

離れの研究室に明かりがついていることを確認してほっと一息をつくのが最近の習慣だ。

「明日は出てくるかな。」

寂しい気持ちから出た本音が足元へと落ちていく。

もう一週間、いやそれ以上か北都の姿を見ていない。

きっと北都はまだまだ頑張っているのだろう。

休む為の準備を整え、窓際に椅子を運んで栢木は部屋の灯りを消した。

椅子に座り毛布を体に巻き付ければ完成だ。

視線の先は研究室、最初はベッドの上で耐えていた栢木もいつしかこうやって夜を明かすようになった。

「長いな。」

こんなに長い間一歩も出てこないなんて今までにない、研究室の灯りも一晩中点きっぱなしだった。

誰も立ち入ることが出来ないから北都の今の状態を知る者はいない。

一度は入れたからといって次からも堂々と入っていける程栢木の心は強くなかった。

部屋の外から様子を窺う日々。

食事を置いておく受け渡し窓口に返される食器だけが唯一の情報だった。

今のところ生きてはいるようだけど、いつあの発作が起こるかと思うと穏やかではいられない。

今まで北都は1人で発作にも対応してきたから大丈夫だと分かっているのだが、知ってしまった今では気になって仕方ないのだ。

薬はちゃんとあるのか、苦しんでいないだろうか。

「異常なし…なのかな。」

おそらく北都は体が強い方ではないのだろう。

それはまだ病と闘っているからというのもあるが、キリュウと対峙した時もそう感じた。