陽だまりの林檎姫

北都の背中に手を回して栢木も応える。

しばらくそうした後に朝食をとるよう促されて北都の部屋を出たのだ。

そして北都はすぐに研究に入ってしまった。

もうどれ位日が過ぎているだろう、あれから二人に進展はない。

しかし特別な水を採ることが出来たせいもあるのだろうと予想していたから不安は無かった。

離れに届けた食事はしっかり無くなっていることから生きていることは分かっている。

無事でいるならそれでいいと栢木は自分に出来ることをやりながら北都が出てくるのを待っている状態だった。

ミライが言う様に傍から見た栢木と北都は既に睦まじい関係に見えるのかもしれない。

それでも栢木には捨てきれない不安と強く感じる距離があった。

関係が良くなった今でも忘れない。

「お前、貴族なんだってな。」

あの時の斬りつけられるような鋭い眼差しは心の底から嫌悪を抱いていた。

例え考え方が変わったとしても北都がその事実を忘れる訳がない、そしてそれを気にしないと考えることも無いだろう。

栢木が北都にもっと近付くためには伯爵家の人間であるという称号を捨てなければならない。

今までの自分を全て捨てることになるのだ。

誇りと共に守り続けてきた栢木の姓を手放すことにもなる。

それでも。

「栢木ー!」

どこからか呼ぶ声がして栢木は自分の世界に入り込んでいた意識を現実へと引き戻した。

「はーい。」

まだ仕事は終わっていない。

栢木は呼ばれた方へと向かい、秘密基地へ続く倉庫を後にした。