陽だまりの林檎姫

丁寧に差し出してくれた言葉は栢木が芯から大切にしているものだと感じたからだ。

キリュウの件があってそれは深く栢木の心に染み込むことになった。

それがどれだけ貴く難しいものであるかを身をもって知った。

「…なにその乙女の妄想みたいな深い台詞。」

「うちの両親の教えなのよね。好きな人と一緒にいられることは幸せなことだってずっと言ってた。」

「駆け落ちでもしたの?」

「寸前までいってたって。なんとか機転を利かせてまとめたらしいよ?」

納得の声を出そうとしたのか、ミライは口を開けたまま何度か頷き栢木の言葉を理解した。

「…だから、私も北都さんを諦めないでいようって思ってる。」

「2人は恋人なんじゃないの?」

「まさか。」

首を横に振ると栢木は少し困ったような顔をして自分の中にある言葉を探す。

「少しは近付けたけど…これ以上踏み込んではいけない線があって。…またその線が太いんだ。」

いつの間にか辿り着いていた倉庫の扉をミライが開けて2人は中に入る。

脚立を元の位置に戻すと労いと感謝の言葉をミライからかけられた。

「傍から見れば栢木と北都様は上手くまとまっているように思うんだけどね。」

「残念ながらね。」

そう言うと栢木はミライの方に手を差し出して訴える。

「貸して。絵は私が戻しておくからミライは次に行っていいよ。」

「でも。」

「北都さんも研究室にこもりっきりだし、あまりやることないからね。」

「分かった。じゃあ、お言葉に甘えちゃおう。宜しくお願いします。」

そう言ってミライは大切に抱えていた絵画を栢木に差し出す。

さっき飾った場所にずっとかけてあったものだ。