陽だまりの林檎姫

「これで一件落着な訳だし。私も心おきなく嫁に行けるってもんよ。」

「え!?ミライ結婚するの!?」

「そりゃいつかはするわよ。その為の相手探しに力を入れられるって話。」

力強く拳を掲げるとミライは鼻息荒く闘志をむき出しにする。

「いい情報手に入れたの。隣町の高級バーに貴族の息子たちがよく出入りしているらしいから、これからガンガン通うつもり。」

「ガンガン…。」

「何とかして近付いて手に入れないとね!理想を手に入れる為には自分で動かなきゃ。」

ボクシングでもするかのように拳にした腕を伸ばしては畳む行動を重ね、ミライの目は鋭くなる。

ミライ自身の様子も気になるが、栢木は前にも聞いたことのある言葉が気になって疑問符を打ち出した。

「ねえ。前にも言ってたけどミライの理想って何?」

「へ?」

「三浦さんに嫁げばって話の時にも言ってたじゃない。私には理想があるって。」

ああ、と納得の声をもらすとミライは脚立を片付けようとする栢木に当然の様に口を開く。

「玉の輿。」

素直すぎるミライの言葉に栢木は思わず脚立を倒しそうになった。

ミライはといえば何故か両手を腰に当てて偉そうな態度になっている。

「玉の輿…。」

「金持ちになりたいの。高級なものに囲まれて贅沢な時間を過ごしたいのよ。いきなり結婚とはいかなくても、デートとかプレゼントでもいいから与えられたいわねー。」

うっとりしながら話してくれた方がいっその事気持ちがいいのに、ミライは噛みしめるように何度も頷いて語り始めた。

夢見る少女というよりは、酸いも甘いも知った大人の女だ。

金持ちだったら誰でもいいという訳ではなさそうだな。

そんなことを思いながら栢木は言葉なくミライの言葉を聞き続けた。