陽だまりの林檎姫

「それにしても、付きまとい事件が解決して良かったわね。結局は人違いだったんでしょ?」

何でもない世間話のようにミライが切り出すと栢木は思わず視線を宙に逃がしてしまった。

キリュウを放っておくことも出来ず、病院まで付き添った二人は医師の診断を聞くことになった。

北都の予想は当たり、相麻製薬の薬を使用することで治療が進められることになったのだ。

自身も服用していたことがある鎮痛剤だと気付いた北都には思うところもあったらしい。

屋敷で心配しているだろうからと北都は先に帰り、栢木はキリュウの目が覚めるまで付き添うことにしたのだ。

ミライたちに栢木の無事と軽い説明をしてくれたのは北都だった。

しかし無事だと聞いていても栢木とはぐれてしまったことに責任を感じていたミライは栢木が戻るなり泣き崩れてしまったのだ。

やはりケイトからの手紙をもらった場面に居た為、栢木のことはかなり注意して守ろうとしていたらしい。

あの場にいたマリーとミライには付きまとっている男がいると軽く話したが、2人は思った以上に重く受け止め栢木を守ろうとしてくれていたのだ。

栢木がいないと分かった瞬間にマリーは北都へ報告に行き、ミライはすぐに荷物を置いて栢木を探しに出かけた。

北都の帰宅によって栢木の無事が知らされたが居場所が病院ということでまたパニックに陥ったらしい。

栢木は近くで倒れている人を見付けてそのまま病院に付き添っている。

北都の作り話を説明されて納得はしたものの屋敷に帰ったその瞬間に抱きつかれて号泣したのだ。

後から聞いたが、北都も栢木が戻るまで離れにも行かずに私室でずっと待っていたらしい。

「信じられない。とばっちりよね!」

「うーん、…ねえ?」

「女優と間違えて追いかけ回していたなんて、本当迷惑な話だわ。」

その言葉には笑うしかない。

ここまで心配かけた以上、本当のことを話さなければと思う栢木を置いて北都がさらりとついた嘘がこれだった。

憧れの女優に似た栢木を本物だと勘違いしていた男が付きまとっていた。

本物ではないと分かり、更に痛い目にも合わせてやった為、男はもう現れないだろうという話だ。

その後に倒れていた人を発見し、という時系列が出来上がっていたことには驚いた。