陽だまりの林檎姫

満足そうに微笑むとタクミはそのままタオットの執務室の扉を開けて出て行った。

「な、ちょっと待て!今のは一体どういう意味だ!」

後ろでタオットの叫ぶ声が聞こえるが答えてやるつもりはない。

鼻歌を歌いながら歩いていくタクミの背中には悲しい父親の叫び声が降り続けていた。



*
一方、嵐が去った後の相麻邸では再び穏やかな空気が流れていた。

「どう?こんな感じ?」

脚立に乗った栢木は少し離れた場所にいるミライに向かって声をかける。

どうやら絵画の交換をしていたらしい。

ミライは両手の親指と人差し指で枠を作るとそれを覗きこみながら眉を上げたり目を細めたり吟味をした。

「うーん、もうちょい上げて。」

「はーい。」

指示を受けた栢木は手にしていた絵画の縁を触って少し調整をする。

「どう?」

もう一度栢木は首を傾げた。

相変わらずミライは難しそうな顔をして絵画の飾り具合を確認している。

まっすぐかどうか、これはいつも難しい作業だ。

「うん、いいかも。ありがと栢木!」

納得がいったミライは達成感いっぱいの笑顔で栢木に合格サインを出した。

つられて栢木も笑顔になると改めて新しく飾られた絵画を見る。

「よし。綺麗だ。」

美しい芸術品に目を細めると満足そうな笑みを浮かべて脚立から降りようと体を動かした。

すかさずミライが脚立を支えるとまたそこで笑みがこぼれる。