挑むように向けられた視線も覚えた表情も、そのどれもが穏やかさからかけ離れている。

あの時はもう先のない自分がどう思われても平気だった。しかし光が見えた今ではそんな考えなんて泡のように消えてしまっている。

先のことが考えられるなんて信じられない。

そう思うとまた心が震えて胸が熱くなった。

「…いま会うとまた睨まれそうだから時が来たらまた会いに行くと伝えてくれないかな。」

「北都さんにですか?」

「感謝してもしきれない…薬を作ってくれてありがとうと…もしこの病気が治ったら伝えにいきたいんだ。」

「…はい。」

それは何よりの誉だと栢木は誇らしくて笑みがこぼれた。

北都はどう受け止めるかは分からないが今はそっとしておこう。

「もう行った方がいい。」

「はい。」

「じゃあね。」

キリュウは手を振って栢木が退室するのを見送った。

終わったのだろうか、清々しい気持ちで歩く病院の廊下はまるで光の道に感じられる。

病院の外ではタクミが栢木を待っていた。

「あの人、何も仕掛けてませんでしたよ。」

「そう…ありがとタクミ。」

登場するタイミングの良さから、おそらくタクミはギリギリまで自分たちを見守っていたに違いない。

攫われたりしないか周囲を警戒していたからこその言葉だったのだろう。

「あんな顔する人だったんですね。」

その口ぶりからしてさっきまで病室も見張っていたに違いない、と笑ってしまった。

「昔はね。」