あれから月日が流れた。


あの時の面接官たちは目の前にいないが、代わりとなる人物が栢木と向かい合って座っている。

ここはカフェテリアのパラソルの下、感情とは合わない笑みを浮かべる栢木は目の前にいる人物とほぼ睨み合いに近い状態になっていた。

「随分とご機嫌斜めですね、北都さん。」

折りたたんだままの新聞を読む姿勢からほんの僅かに向けられた視線はまさに刺すような厳しさ。

それはたった今、当然の様に向かいの席に座った栢木に対しての抗議を物言わず表しているようだ。

しかしそんな態度はすっかり慣れたもので栢木にとっては脅しに値しない、寧ろ反抗的な態度として受け止められる程になっていた。

こんなに気持ちよく晴れた青空の下で、爽やかな風が吹き抜けるカフェテリアの一角で、色とりどりの鮮やかな景色を作る花屋の目の前で。

大抵の人であれば穏やかな日常に幸せを感じるこの空間で、栢木と北都は2人して睨みあいという異質な空気を漂わせている。

「北都さん。」

いくら仕掛けても効果がないことなんて百も承知、苦々しく口にした名前と共に歯ぎしりが出そうになるのを栢木はなんとか堪えた。

何故この目の前にいる青年はこんなにも不機嫌そうな態度で新聞を眺めているのだろうか。

「不機嫌なのは私の方なんですけど。」

鮮やかな金色の髪を揺らしドスの効いた声で呟いてみても何にも伝わらない。

いつもの事だ、分かっていても冷静ではいられないのが悔しくもそうでなくもある。

自分が悪いのか、ここに至るまで何度となく思い悩んだがイヤイヤそうじゃない。