どれだけ懸命に走っても北都には追いつかない。

しかし負けていられないミライは気合を入れ直してまた腕を大きく振り走り始めた。

あれだけ北都が走れるなんて知らなかった、それだけに現状がよくないのだと焦りが生まれてくる。

北都の脳裏に雨の日の栢木の姿が浮かんで拳に力が入った。

「栢木…。」

はぐれたという場所に辿り着いても、穏やかな日常が窺えるだけで栢木の姿は無い。

息を切らし、胸を上下させながら北都はゆっくりと周りを見渡した。

視線の先に見えたのは城が建てられるのではないかと思える程の敷地がある公園だ。

直感だった。

もしかしたらという気持ちが強くなり北都は公園に足を向けて走り出す。

「栢木!」

声を上げても届くとは思えなかった。

しかし叫ばずにはいられない気持ちが北都を焦らせ不安を増幅させていく。

悪い予感が、どうしても消えてくれなかったのだ。