陽だまりの林檎姫

しかし驚いている間に強い光が差してたちまち目が眩む。

北都がカーテンを開けたのだと気付いたのは目が光に慣れてからだった。

閉じていたカーテンを次々に開けていく北都は手際よく窓も開けていく。

「定期的に来てるんですね。」

「書斎の本を入れ替える為にもな、ここも風を通さないと。」

改めて屋根裏部屋を見渡すとそこは天井こそ低いものの広いスペースがとられた立派な隠し部屋だった。

これが北都の秘密の場所だと思うとそれだけでワクワクしてくる。

今日は生憎と曇りだが、天気がいい日は奥まですっかり見渡せるのだろう。

「…ソファがある。」

窓の傍に置かれたソファを見て栢木は笑ってしまった。

ここで北都がどのように過ごしているのかが分かって新鮮な思いだ。

どうやって入れたのか、それとも後から作ったのか、横に長い本棚にズラリと並んだ書物を物色してソファで寛ぎながら読みふけるのだろう。

1人で。

「何がおかしい?」

「はい?」

「笑ってる。」

いつの間にか傍にいた北都に見られていたようだ。

「ここでの北都さんの生活が手に取る様に分かるな、と思いまして。」

ソファを指しながら栢木は上目遣いで答えた。

最初は意味が分からなかった北都だが、すぐに眉を寄せて不機嫌な顔になるところを見ると面白くなかったらしい。

「この本だ。」

話題を変える様に北都は2冊の分厚い本を栢木に差し出した。

表紙を見る限りではレスタ語の表記ではない、それに2冊ともが薬学書であることに気付いた栢木は焦りから助けを求める様に北都を見上げた。