閉塞感の拭いきれない貴族の風潮、時代と共に少しずつ様変わりをしているがまだ遅いようにも感じる。

そう訴えるのは変わり者であると扇子の奥で囁かれ笑われてきたのだ。

全てがそうだとは言わないが、多くがそれであるとは言えるだろう。

ここに来て、あの世界から離れてみて自分が感じていたことは間違いではなかったと思い知らされた。

「おはよう、栢木。」

仲間が声をかけてくれる。

自分を何の飾りもなく見てくれる。

新鮮で心地よくて、愛しいもう1つの帰るべき家の様になったことは栢木の誇りだった。

「おはよう。」

流れるような挨拶ではなく、しっかりと捕まえる呼びかけに栢木は足を止める。

声の主はマリーだった。

「おはよう、マリー。」

「栢木、大丈夫なの?」

「うん。今日も元気いっぱいよ?しっかり食べて、いっぱい働かないとね。」

「そうじゃなくて…。」

昨日ケイトからの手紙を栢木に渡してくれたのはマリーだ。

内容を確認するなり様子がおかしくなった栢木の様子を見ているだけにその面持は固い。

北都とは共用しているようだったが、だからといって安心には繋がらなかった。

それに、あの後受けた北都からの指示もさらに不安を煽ったのだ。

「栢木への来客は断れ。粘るようなら俺を通せ。」

いつもとは違う強めの命にマリーも、同じくその場にいたミライも動揺が隠せなかった。

付きまといであると事情は知らされたが、果たしてそれだけなのかとも疑ってしまう。

しかし栢木自身も北都もそれを明かすつもりはないのだ分かっていた。