陽だまりの林檎姫

淡々と語るこれまでの行動は全てそこに繋がっていたのかと思うと栢木は項垂れてしまった。

今まで北都に仕えてきた人たちはこうした思いが分からず歩み寄れると思っていたのだろう。

しかし北都自身に興味がない以上どれだけ頑張っても空回りするだけでそれが憤りに変わり去っていったのだ。

悲しい負の連鎖だったのだと栢木は噛みしめた。

「でも一理あるな。」

突然変わった声に栢木は誘われて顔を上げる。

さっきまでと同じ様に遠い目をして過去の自分を振り返る北都の姿に栢木は目を細めた。

「誰にも知られたくないから、誰も寄せ付けなかったんだろうな。特にここは本当の意味で一人になれる解放された場所だったから。」

ゆっくりと研究室内を見渡す姿は一つの終わりを悟っているようで居た堪れない気持ちになった。

北都を抱きしめたい衝動に駆られ、栢木は必死で抑える。

北都はきっとそれを望んではいない。

栢木がもつ役割は北都の話を聞いて思いを共有することだと分かっていたのだ。

抑えろ、泣きたい気持ちも一緒に抑えなければいけない。

「ところで俺も気になっていたんだが。」

俯き加減になって耐えていた栢木に、さっきとは違ういつもの調子に戻った北都が声をなげてきた。

「お前いつもそんな恰好で寝ているのか?」

「は?」

言われていることの意味が分からず栢木は疑問符を打ち出して北都の顔を見た。

しかし北都も同様に瞬きを重ねて栢木の方を向いている。

指摘された通りに自分の服装を見てみると、ようやく北都の言わんとすることが分かって納得の声を上げた。

栢木は仕事着に近い姿で座っていたからだ。

何より彼女の頭には昼間見たウィッグが当然の様に付けられている。

「異変に気付いて出てきたんだったら着替える余裕もなかっただろ。」