陽だまりの林檎姫

「2人になって開口一番に言われたよ。お前も同じ病かって。」

「…それは。」

「公爵は気付いたらしい。」

あの短い謁見の中で見抜いた公爵に北都は恐怖を感じ手が震えた。

誰にも言っていない病のことを知られてしまった、もしかしたら自分が隠せていると思っているだけで周りには知られているのかもしれない。

社長にも。

そう考えだすとすぐにでも逃げ出したくなった。

どこか遠くへ逃げないと、周りに迷惑をかけることになってしまう。

しかしワタリ公爵は大丈夫だと微笑み頷いた。

「儂と共に治療を受けよう。お前には恩がある、今度は儂が返す番だ。」

ワタリ公爵の夫人は公爵の為に医学を深めていたようで専門家から様々な話を聞き知識を得ていたようだ。

「あの薬はとても複雑なもので出来ている。もしかすると開発者がその病に侵されているのかもしれない。」

どこかの医師が漏らした言葉をワタリ公爵にも伝えていたことから北都に探りが入ったようだった。

他の誰にも知られたくないという北都の思いを考慮し、北都を気に入った公爵が未来を期待して医学留学をさせるという名目で数か月屋敷を離れることになったのだ。

勿論、その間は全て治療にあてられていた。

「思った通り俺はかなり進行していたようで治療には時間がかかった。だから人より多く後遺症の様なものが残り…さっきみたいな頭痛や目眩に襲われる。」

「さっきの薬は?」

「症状を和らげる薬だ。俺を治療してくれたタータン医師が処方してくれた。」

やがて無くなる症状だが付き合いは長くなりそうだと北都は短く息を吐く。

そして沈黙が生まれると北都の話はこれで終わったのだと栢木は理解した。

最後まで聞いてから尋ねよう、そう思っていた疑問が抑えきれず栢木は口を開く。

「北都さんはどうして別宅に住んでいるんですか?」