陽だまりの林檎姫

いくつかの薬、その効能を記した紙を添えて北都は相麻製薬に出向いた。

どれくらいぶりかに対面する義理の父は少し年を重ねていたように感じたが、それは向こうも同じだったようで北都の成長ぶりに驚いていたようだ。

さらには出された薬たちにも圧倒されてほとんど言葉もなかったという。

「北都、これは君が作ったのか?」

震える声で問われた表情はよく覚えていた。

信じられない、でも疑ってはいないその眼差しにどこか救われた気持ちになったからだ。

「はい。」

そう答えてから北都の周りの環境が変わった。

「社長が医療機関の最高峰である場所に持込み開発した薬の説明をするとたちまち注目が集まった。誰が作ったのか、どういう人物なのか、それはもう騒がしかったな。」

「そうでしょうね。」

「大半は社長や三浦さんが守ってくれていたけどな。でも全てを出し切って開発した俺には関係のない話だ。また屋敷にこもりきりで本ばかりを読んでいた。世間の事なんてどうでもいい、そう思っていたけどそれを許してくれない人がいた。」

社長ですか、栢木の問いに北都は首を横に振る。

「ワタリ公爵だ。」

「わ!?」

意外な大物の登場に栢木は思わず大声を出し慌てて両手で口を隠した。

呆れているだろう北都の顔を見ても今は穏やかに、しかしどこか寂しげに微笑んでいるだけだ。

「ワタリ公爵も同じ病を患っていた様でお礼がしたいと社長と一緒に公爵家に招かれたんだ。皆で食事をして、2人で話がしたいと俺は公爵と別室で話をすることになった。」

少しだけ北都の表情に明るみが出たことに栢木は気付く。

当時を思い出している北都は遠い目をしたままだが、ここに来て初めて北都の目に明るさが戻ったような気がした。