「未央ちゃん、今日友達と来てるよね?」
「うん」
「今日のこと、何も聞いてない?」

なんのことかわからなくて首を傾げると「うそ、メールまわってないの?!」と携帯を取り出してメールをチェックをし始めた。

「いや、送ってる。ちゃんと言ったもん。ねぇ、一ヶ月前くらいに同窓会の開催メールしたんだけど覚えてる?」

え?と数秒考えて、あたしも携帯を取り出し受信フォルダを開けた。
たいしてメールを受信することもないから、そのメールはすぐに見つかった。

「あ、来てる…」
「来てる?よかった!今回は仕方ないけど…次は来てよね!」

絶対よ?!と言って笑う夏芽ちゃんは「友達介抱してあげなきゃだよね!邪魔してごめんね」と手を振って戻っていった。

こんな偶然もあるんだな、と思いながら個室から顔を出し、マスターと目が合ったから口パクでタクシーを呼んでもらうよう伝えた。

それから栞の傍にいってジャケットを着せたり寝こける栞を起こしながら帰る支度をしてた。
毎度毎度本当に世話がかかる奴だな…と溜息が出る。
あとは私が準備すればいい状態にしあげると襖のドアがノックされ、今日は早くタクシーが来たなと「はーい」と返事をすると開いた襖。

「ほんとにいた...」

そこには5年ぶりに見る葉介が立っていた。

「久しぶり」
「…久しぶり」

本当に久しぶりすぎて変に緊張する私がいる。
高校生の時と違ってスーツを身にまとい、幼さが抜けた男の人になってる葉介に少しドキドキした。

よくよく考えれば、同窓会に葉介がいないわけない。
それに仲良かった夏芽ちゃんがいるんだから当然いるに決まってる。

そこまで考えが至らなかったということは過去は過去であるということ。
私たちがあの時にどんな別れをしようが5年も経てば過去の思い出に変わる。

痛かった心ももう大人になった私たちには一部でしかない。

「相変わらず人の世話妬いてんだな」
「…まぁね」

葉介が栞を見て苦笑する。
襖を体の分だけ開けてもたれてる。
外の様子は見えないけど、ざわついてるから特に変わりはないらしい。

「5年ぶり?…になんのかな」
「そうだね。卒業してからは会ってないし」

なんだか目は合わせられなくて、だからといって何かしないと気まずくてテーブルの上の皿を重ねて片付けていた。

会わなくなったのは卒業してから。
でも話さなくなったのは私が葉介に別れを告げた時から。

綺麗とは言えない別れ方だった。
私の一方的な言い分で別れたけど、それを弁解して引き止めることもなかった葉介。
だからあの決断はきっと間違ってなかった。

少しの間は引きずったりもしたけど、受験だなんだって言ってたら、あっという間に季節は過ぎて一言も離さず会わなくなった。

別れとはそういうもので、まさか5年も空いて再会するとは思いもしなかった。