――――カチャカチャと物音と人が話す物音で目が覚めた。

目は開けていないけど、誰かの話し声と寝る前にはなかった重みを感じる。
そして、ユーイチの匂い。

くるりと寝がえりをうってみるけど、やっぱりユーイチの匂いがする。
しかも、寝ていたはずのソファーではなくちゃんとした布団の上で寝ている。
手を伸ばして少し動かしたけど誰もいない。

ゆっくりと目を開けると、部屋は真っ暗。
とっくに陽は沈んだらしい。
リビングからの光がドアの隙間から入っている。

しばらくぼーっと目がなれるのを待ってると、だんだんと見えてきたのはユーイチのデスク。
開きっぱなしのパソコンにソラ姉が同棲祝いにくれた掛け時計。

そこでふと気付く。
ソファーで寝てたあたしを部屋に運んでくれたからベッドの上で寝ているわけだけど、どうしてあたしの部屋に運ばず、ユーイチの部屋に運ばれてきたのか。

確かにソファーからの距離を考えたらユーイチの部屋の方が近い。
このあたしを運ぶんだから近い方に運ぶのは当たり前。
寝てる人間を運ぶのは起きてる人間を運ぶより重いって聞いたことがある。
それにしても、帰ってきたなら起こしてくれればよかった。

寝てたあたしが言うのもなんだけど、帰ってくる時間が早かったのならどこかに行けたのかもしれないのに。
寝てしまった自分の行動を棚に上げながら、横たわってもう一度目を閉じて色々考えた。

「ユーイチ、サチ起こしてきて」

なぜがソラ姉の声が聞こえて、数秒後にユーイチだろう人が部屋に入ってきた。
起きてるけど、目を開けることはしなかった。

「サチ」

ユーイチの声でゆっくりと瞼を開ける。

「おかえり」
「ただいま。何時から寝てたの」
「15時まわったのは覚えてる」
「いい昼寝したな」

優しく笑うユーイチにあたしも笑うと髪を撫でてくれる。

「ラブラブしてるとこ悪いんだけど、早く来てくれなーい?こっちはお腹空いてるんだけどー」

部屋に入り込む光に影が出来て、ソラ姉が笑いながら言う。
「ソラ姉いるんだけど」と聞くと「勝手に来た」と答えて、体を起してくれた。

「あんた達、いつからそんなカップルらしくなったのー?」

そんなからかうような声を聞きながらユーイチと一緒に部屋を出るとテーブルに並んだ夕食。

我が家のようにテーブルに座って夕食が並ぶのを見ているソラ姉の旦那様のソウスケさん。
そして、せっせと動いて夕食の準備をしている妊婦になったソラ姉。

昼寝から目が覚めれば、クリスマスだったよね?と思うくらい予想外な光景だった。