もう社会人も2年目のあたしが通ってる、この家。
あたしの方が定時が早いこともあって、予定がない日は合鍵で入って夕食を作って帰りを待ってる。予定なんて毎日入んないからほぼ毎日いる。
料理なんて一切出来なかったんだけど、やろうと思って、やる気があれば出来んだな、って思う。
最初は料理本見ながら必要以上に長い時間かけて作ってた夕食も、今は30分あれば作り上げることが出来るようになった。
「ただいま」
鍵のかかってない玄関のドアを開けて帰ってきたのは言うまでもなくあたしの彼氏、32歳。
「なんだ、いたのか」
“なんだ”ってなんだよ、って思ったのはあたしだけじゃないと思う。
ほぼ毎日いるあたしに対して“なんだ”ってなんだよ、と毎日思う。
合鍵くれたってことは、いつでも来ていいってことで、当然彼氏のために夕食作ってやりたい気持ちが起こるのが彼女ってもんでしょ。
あたし、何か間違ってる?
「おかえり。夕食作ったけど」
「食う」
食べるんだ。
時間的にも食べて帰ってきたのかと思った。
祐介がスーツから部屋着に着替えてる間に温めたり、ご飯入れたり、並べたりしてる自分にちょっとだけ自惚れる。
仕事を終えて帰ってくる彼氏の為に夕食を作るあたし。
帰ってきた彼氏の為に準備をするあたし。
「いただきます」
自分の作った夕食を目の前で食べてる彼氏を見てるあたし。
別に変な病気でもないし、少女漫画の読みすぎでもないけど、こうして自惚れてないと報われない気がして腹が立つ。
「美味しい?」
聞いたところで漫画や小説みたいに「美味いよ」と返事が返ってくるなんて思ってない。ていうか、作りはじめた頃から返事が返ってきたことなんて一度もない。
ただ、まずいときは正直に「まずい」って言われる。
だから返事がないってことは“美味い”か“普通”のどっちかだと思う。
それでも、やっぱり礼まではいらないけど彼氏の口から直接“美味しい”て言葉がほしいわけで、これは女の我が儘なんかじゃないと思う。
「美味しい?」
だから今日は久々にしつこく聞いてみた。
「ね、美味しい?」
「・・・」
「祐介、聞いてる?」
「あぁ」
「美味しい?」
「あぁ、多分」
最後の一言多くね?て思ったの、あたしだけじゃないはず。
“多分”てなによ。
美味しい?って聞いてんだから、“美味い”か“まずい”かのどっちかでいいじゃん。
あたしは片肘つきながら黙々と食べすすめる祐介の顔を見てた。
業界人だから顔はいい。歳の割りにまだ若いし、雰囲気だって普通の男とは違う。
そんな男がなんであたしの彼氏なんだ?って思う。
歳だって10歳違うし、祐介から見たらあたしなんてまだまだ子供で女の魅力のカケラも微塵もない。
そんなあたしとなんで1年間も付き合ってんの?って思う。
“別れたい”とか“不釣り合い”とかそういう意味じゃなくて、知りたいのは“祐介が本当にあたしの事が好きなのか”ってことで、家政婦のつもりで合鍵渡したのかどうかってこと。
エッチの回数が減ったとか、女の香水が匂うとか、帰りが遅いとか、色々言いたくて聞きたいことはあるけど、32の男が頻繁に盛んのもどうかと思うし、まだ芸能界で仕事してる間は色んな女の人に会うだろうし、勝手に家に上がってる分際で嫁の小言みたいに帰宅時間まで縛ることも出来ない。
歳が離れてるから、生きてる年数も社会経験も人間関係もあたしの感覚とは全く違うし、理解しようにも、あたしには理解出来ない。
頭ではわかってるんだけど、不安になるし、寂しいし、怖い。
あたしの方が定時が早いこともあって、予定がない日は合鍵で入って夕食を作って帰りを待ってる。予定なんて毎日入んないからほぼ毎日いる。
料理なんて一切出来なかったんだけど、やろうと思って、やる気があれば出来んだな、って思う。
最初は料理本見ながら必要以上に長い時間かけて作ってた夕食も、今は30分あれば作り上げることが出来るようになった。
「ただいま」
鍵のかかってない玄関のドアを開けて帰ってきたのは言うまでもなくあたしの彼氏、32歳。
「なんだ、いたのか」
“なんだ”ってなんだよ、って思ったのはあたしだけじゃないと思う。
ほぼ毎日いるあたしに対して“なんだ”ってなんだよ、と毎日思う。
合鍵くれたってことは、いつでも来ていいってことで、当然彼氏のために夕食作ってやりたい気持ちが起こるのが彼女ってもんでしょ。
あたし、何か間違ってる?
「おかえり。夕食作ったけど」
「食う」
食べるんだ。
時間的にも食べて帰ってきたのかと思った。
祐介がスーツから部屋着に着替えてる間に温めたり、ご飯入れたり、並べたりしてる自分にちょっとだけ自惚れる。
仕事を終えて帰ってくる彼氏の為に夕食を作るあたし。
帰ってきた彼氏の為に準備をするあたし。
「いただきます」
自分の作った夕食を目の前で食べてる彼氏を見てるあたし。
別に変な病気でもないし、少女漫画の読みすぎでもないけど、こうして自惚れてないと報われない気がして腹が立つ。
「美味しい?」
聞いたところで漫画や小説みたいに「美味いよ」と返事が返ってくるなんて思ってない。ていうか、作りはじめた頃から返事が返ってきたことなんて一度もない。
ただ、まずいときは正直に「まずい」って言われる。
だから返事がないってことは“美味い”か“普通”のどっちかだと思う。
それでも、やっぱり礼まではいらないけど彼氏の口から直接“美味しい”て言葉がほしいわけで、これは女の我が儘なんかじゃないと思う。
「美味しい?」
だから今日は久々にしつこく聞いてみた。
「ね、美味しい?」
「・・・」
「祐介、聞いてる?」
「あぁ」
「美味しい?」
「あぁ、多分」
最後の一言多くね?て思ったの、あたしだけじゃないはず。
“多分”てなによ。
美味しい?って聞いてんだから、“美味い”か“まずい”かのどっちかでいいじゃん。
あたしは片肘つきながら黙々と食べすすめる祐介の顔を見てた。
業界人だから顔はいい。歳の割りにまだ若いし、雰囲気だって普通の男とは違う。
そんな男がなんであたしの彼氏なんだ?って思う。
歳だって10歳違うし、祐介から見たらあたしなんてまだまだ子供で女の魅力のカケラも微塵もない。
そんなあたしとなんで1年間も付き合ってんの?って思う。
“別れたい”とか“不釣り合い”とかそういう意味じゃなくて、知りたいのは“祐介が本当にあたしの事が好きなのか”ってことで、家政婦のつもりで合鍵渡したのかどうかってこと。
エッチの回数が減ったとか、女の香水が匂うとか、帰りが遅いとか、色々言いたくて聞きたいことはあるけど、32の男が頻繁に盛んのもどうかと思うし、まだ芸能界で仕事してる間は色んな女の人に会うだろうし、勝手に家に上がってる分際で嫁の小言みたいに帰宅時間まで縛ることも出来ない。
歳が離れてるから、生きてる年数も社会経験も人間関係もあたしの感覚とは全く違うし、理解しようにも、あたしには理解出来ない。
頭ではわかってるんだけど、不安になるし、寂しいし、怖い。



