帽子のおじさん

私とおじさんはベンチから立ち上がる。


「さ、俺も帰る時間だ。」


「おじさん、どこに帰るの?」


「どこって、自分ん家だけど。」


彼の目はきょとんとしていたが、私もその反応に対し、きょとんとした。


だって、この人ホームレスだろ?


「誰がホームレスじゃいっ!」


おじさんは私の頭を掌で鷲掴みにして揺らした。


「また人の心読んで~。おじさんいつもベンチで寝てるから、ホームレスかと思ったよ!」


「ちゃあんとあるよ。じゃあ、またね。」


ふいっと、顔を合わせず手を上げ、私とは反対方向に公園から去っていった。


その別れ際が、何故か寂しげのようで、素っ気なくも感じた。


私は一瞬後悔した。


いくらまき夫でいたといえ、根拠もなくホームレスだなんて失礼な事を言ってしまったと。


傷付いたのかも知れない。


きっとまた彼はこの公園に現れる筈だ。


おじさんに愚痴を聞いて貰ったのに御礼もしていない。


次に見掛けたら、必ず謝ろうと決意した。