あれだけ、『絶対に関わらない』って宣言しておいて……。


今隣に並んで帰宅途中。
珠時が居たら、やっぱりな、と笑われそうだ。

いや、だってさ、何か後味悪いじゃん?
結構マジで怒らせたし。


「………昼、怒ってなかった?どうして一緒に帰るわけ?」



冷やかな視線を横目で流してくる日椎。


「た、たまたま帰り時間が重なっただけ。」
「へぇー……」


短く返され、会話は終了。
無言の空気が重たい。


そもそも今日顔見知りになった奴と二人きりで会話なんて無理だったわ……。


「あー…のさ、お前って何でいっつも女を怒らせての?」


純粋に気になる素朴な疑問。
確かにちょっと無愛想だし、多少ムカつく部分はあるけど毎度毎度女に振られるような奴には思えない。



「…………さぁ?」


日椎はさも興味無さげに答えた。


「何て言うか勿体ないよな。多少性格悪いけど、顔だけなら文句なしなのに。お前すぐ振られるじゃん。」
「褒めてるの?貶してるの?」
「え、うーん、どっちだろ?」
「……変な奴。振られるって言っても俺、付き合った覚えないし。」
「はい?」
「告白されて興味ないから反応返さないと、向こうが勝手に肯定の意味に捕らえて付き合ってることになるだけ。」


な、なにそれ……。


「……ばか?」
「………あ?」
「いや、だって馬鹿だろ!相手に勘違いさせるって分かってるなら、きちんと返事してやれよ。」
「だからそう言うのがいちいち面倒くさいんだよ。」
「ーー痛いじゃん。どっちも痛いじゃん。」



痛みを感じない人間なんていない。
勘違いだと気付く相手の心も、毎度毎度殴られる日椎も、どっちも痛いに決まってる。



「……………何でアンタがそんな顔するの?」
「そんな顔?」
「アンタが一番痛そうな顔してる。」
「………だって。もっと相手のことも自分のことも大切にしろよな!」
「指図される覚えないんだけど。」


やっぱ変な奴、と独り心地に呟いて日椎は笑った。