ビシッと指を突き刺して、宣言した俺に日椎は声を上げて笑った。


「アンタやっぱ面白いな。」
「面白くない!ってどこ行くんだよ?」


一頻り笑うと日椎は食堂の出口方面へ足を動かし始めた。


「もう用済んだから。名前聞きたかっただけだし。じゃあね、ウサギ好きの山碼くん。」


完全に馬鹿にしてやがる。

立ち去る背中を忌々しく睨んでいたら、とあることに気が付いた。
食堂にいる、ほとんどの女子学生が日椎に視線を送っていた。

あーあ、素晴らしいほどのモテっぷりですこと!


「珠時、前言を撤回する!日椎は超性格の悪い、難あり男だ!ありゃ振られて当然だ!」
「まぁ、落ち着けって。確かにイメージとはだいぶ違ったな。けど、あんな風に喋るなんて意外と面白い。」
「どこが面白いんだ。あー、むかつく。もう絶対関わらない!」


はいはいと、珠時の苦笑。


「でもそう言ってると案外深い関わりが出来るものだよな。」
「いいや、ないね。絶対ない。もー、関わらない!」


せっかくのトンカツが冷めてしまった。

それもこれもアイツのせいだ!


「山碼、今日何時終わり?」
「16時半だけど図書室寄ってこうと思ってる。」
「りょーかい、じゃあ先帰るわ。んでもって午後の講義始まるから、早く食えよな。」


言われて腕時計を見れば講義開始5分前。


「うわっ、やっば。次、三嶋(ミシマ)の講義じゃん!遅刻するとうるせーんだよな。」


遅刻したときの三嶋の鬼畜さと言ったら、まるで悪魔だ。


一時間の講義でずっと当てられ続ける。

冗談じゃない、と残りのご飯を一気に掻き込んだ。