「そりゃ酷いタイミングで出くわしたな。」


昼休み、食堂で一緒に飯を食う珠時はケラケラ笑う。
話題は今朝の『日椎振られる現場居合わせ事件』。


「その間の悪さは天下一品だ。」
「うるさい。」


本日のメニューはとんかつ定食。
均等に切り分けられた一切れに箸を伸ばし、思いっきり頬張る。


「で?」
「?」
「どうだった?」
「何が?」


にこにこと笑う珠時の意図が掴めず、俺は首を傾げた。


「日椎ってどんな感じの奴だったの?やっぱ変人?」
「いや、普通だと思うけど。て言うかそんなに会話した訳じゃねーし、よく分かんねーよ。無愛想ではあったけどな。」



へぇー、と相槌を打ちながら珠時は食事を再開した。



「そーいや、噂に聞いたんだけどさ。」



珠時は思い出したように口を開いた。


「アイツ、何か病気らしいよ。」
「アイツって、日椎?」
「そ。」
「何の?」
「うーん、よくわかんない。あくまで噂だし。」


病気………、別にそんな感じしなかったけどなぁ。
見ただけじゃ分かんないし、アイツも苦労してんだな。


「あ、」


珠時は急に手を止めて、俺の背後を見て固まる。
怪訝に思い振り返ると、目の前には黒い壁。
ゆっくり視線を上げていけば、俺を見下ろす瞳。


「……どーも。」



聞いた覚えのある抑揚のない声。