無言のまま日椎に連れていかれたのは、図書室。
講義後も人が少ないけれど、昼休みも人影が見えない。
この図書室、俺達以外使ってないんじゃないかな?
日椎は中に入り、ドアを締め切ると俺の腕を離した。
「………で?」
そう切り出したのは日椎から。
「え?」
「どういうつもりなの?」
目の前に立つコイツは明らかに怒りの色を出している。
「えっと………何がでしょう?」
「へぇー、とぼけるんだ。」
日椎が何に怒っているのか本当に分かっていない俺は、首を傾げるしかない。
「何をそんなに怒ってーー」
「この前出掛けてから、俺のこと避けてるよね?どうして?」
ば、ばれてる………。
「いや、そんな事は………」
「ないって?本当に?」
日椎が一歩詰め寄ってきて、俺は反射的に一歩下がる。
「避けてないなら、逃げていかないで。」
そう言ってまた一歩、間合いを詰められる。
俺はまた後退する。
「ほらね、避けてる。どうして?俺、何かした?」
「な、何も………」
徐々に徐々に追い詰められ、とうとう背中が壁にぶつかった。
「あ………」
「もう、逃げられないよ。」
「日椎、ちょっと落ち着けって。」
「俺は冷静。教えて、どうして避けるの?」
背中は壁、両脇には日椎の手。
何処にも逃げ道はない。
「そ、の………」
い、言えない……。
とてもじゃないが恥ずかしくて言えない。
顔合わせるとドキドキしちゃうんで避けてました、なんて言えるわけがない。
今だって俺の鼓動は煩いぐらい鳴っていて………。
「やっぱり迷惑だった?」
「ぇ………」
「俺の思い付きで勝手に連れ回したから。だから怒って避けてる?」
「ち、違う!それはないから!絶対ない!言ったじゃん、嬉しかったって。」
「ーーじゃあ尚更分からない。どうして避けるの?」
至近距離で覗かれて、俺は顔を逸らした。