「…………凄い。」


思わず息を呑んだ。


だってその光景は本当に感動的で、一瞬言葉を忘れた。


鮮やかすぎるオレンジが眼下に広がる町を染めている。

地平線の先から、俺の体までも………。


「凄く綺麗だ………。」
「気に入った?」

問い掛けに俺は少し興奮気味に応える。


「凄い!綺麗すぎ!俺、この景色大好き!」


そう言ったら日椎が、


「良かった。」



と、慈しむように笑った。

優しく、温かく、包まれるような笑い方。


……ずるい。反則だ。


ーードキドキする。

心臓が痛い。

こんな……

こんな風に笑うんだ………。

「前に夕日好きって言ってたから。ここの夕日が綺麗に見えるって聞いて、見せたかったんだ。」
「あ、そうなんだ…………」


鳴り止まない心臓が恥ずかしくて、気まずくて、視線を逸らした。


「………迷惑だった?」


逸らした視線を不信に思ったのだろう。

日椎の問い掛けに俺は全力で否定した。


「そんなことない!すっごく嬉しい!」
「………ほんとに?」
「ほんと!」


見つめられる視線に内心どぎまぎしながら、それでもハッキリと答えた。


「そ。じゃあ良かった。」


日椎は安心したのか視線を夕日の方へと向けた。


日椎、機嫌良さそう………。

今日はこれを俺に見せるため、に出掛けたんだよな?


それって、何だか…………。


「………ん?何?」


俺が見つめていることに気が付いて、こちらを見て笑う。



ーー日椎らしくない。


こんなに優しく俺に接するなんて、日椎らしくない。


変、変だ………絶対に変だ!


だけど、


「山碼?」


それ以上に変なのは、



「な、何でもない!」


ーー煩く、鳴り止まない、俺の心臓の方だ。