ちょうどパンケーキを食べ終えた頃、腕時計に目をやった日椎がそろそろかと口にした。
「出ようか。」
「うん。あ、」
立ち上がった日椎が伝票を手にレジへと向かう。
手早く会計を済ませ、外へと出た。
「俺の分払うよ。いくらだった?」
「いい、いらない。」
「払うって。」
「いいよ。今日誘ったの俺だし、このぐらい奢らせて。」
「………うん。」
コイツは思ってた奴と全然違って………
やることなすこと、全部、格好良すぎんだよ。
「……悔しいけどお前が女にモテる理由分かる気がするわ。」
「何それ。」
「男の敵ってこと。」
「意味が分からない。」
「一生わかんねーだろーよ。」
「はいはい。ちょっと電車使う。」
そう言って改札に向かい始めた日椎を慌てて追いかけた。
一応奢ってもらったわけだし、お礼は言っとかないとなぁ……。
「なあ、」
「ん?」
「……ご馳走さま。」
「ははは、なにその時間差。」
「こ、こう言うのはちゃんとしておこうと思って。ってそんなに笑うな!」
「あー、はいはい。アンタ飽きないわ。最初から素直に言えばいいのに。まぁ、でも、どういたしまして。切符、それ買って。」
言われた切符を購入して改札を通った。
かわし台から3駅先で降りる。
人が少ない、小さな駅。
こんなところに一体何の用だろうか?
「なあ、本当に何すんの?」
「内緒って言ったろ?こっち」
目的地に着くまでは、絶対に教えてくれる気はないみたい。
仕方ない黙って付いていこう。
「どうしたの?置いていくよ?」
「あ、待てよ。」
少し先を行っていた日椎を追いかけ、隣に並んだ。
「俺、こっちの方初めて来たかも。良い所だな。」
「そうだね。人も少なくて、落ち着いてるし。」
「日椎は結構来るの?」
「いや最近は来てなかった。昔、この辺に住んでたけど。」
「へぇ……」
日椎が育った場所。
らしいっちゃらしいな。


