メニュー表を開くと日椎の言った通りパンケーキが有名なのだろう、でかでかと写真が載せてある。


特別甘いものが好きなわけではないけれど、そこまで推すなら食べてみたい気もする。


「………そんなに難しい顔して、何悩んでるの?」
「パンケーキ食べてみたい気もするけど、一人で食いきれる自信ないなって」
「ああ、だったら半分こしよう。」


こりゃまた、意外なことを……。



「いいの?」
「俺も興味あるし。飲み物は決まった?」


頷けば、日椎は呼び鈴に手を伸ばした。


すぐに店員がやって来て、それぞれ注文する。


少々お待ちくださいませ、と店員は言って去っていく。


「それでこの後はどこに行く予定なんだ?」
「内緒。行ってからのお楽しみ。」


悪戯っ子のような顔をして日椎は言う。
こんな顔もするんだ………。

「あのさ、どうして今日俺を誘ったの?いつも話し掛けたら面倒臭そうな顔してるのに。」
「ただの気まぐれ。アンタこそ最初はあんなに苦手って言っておいて最近やたら絡んでくるのは何で?」


そう言えば……
“やっぱりお前みたいにキラキラした奴は苦手だ!”って高らかに宣言した記憶が……。


「あれは、ごめん。お前のこと誤解してたんだ。話してみたら全然違って、その………ごめん。」

テーブルに視線を下げると、ちょうどコーヒーが運ばれてきた。

一緒に並べられた砂糖とミルクには手を付けず、日椎はコーヒーを口にする。


「別に気にしてないから、そんなに謝る必要はない。ただ気になっただけ。」
「今は、本当に苦手とか思ってないから!」

誤解されないよう必死に前のめりになって抗議する。
日椎は大袈裟だと笑った。


「うん、分かってるから。」


弧を描く口元に安心する。


「お待たせいたしました、本日のお任せパンケーキでございます。」


店員の言葉と共にテーブルに並べられるパンケーキ。

二段重ねのパンケーキには赤いソース。
きっと苺だ!


「お先にどーぞ。」

日椎言われ、ナイフとフォークを手に取る。


「いただきます!」

一口サイズに切ったパンケーキを口の中へ。
ふわふわな食感と美味しい苺の風味が幸福感を駆り立てる。



「〜〜〜んまい!」
「そ、良かった。」