「ーーーい、おい!ったく、何でアンタがここで寝てるんだよ。」
「んー………」

強い揺さぶりに、瞼をゆっくり持ち上げる。


「あれ……どこここ?」
「寝ぼけてんなよ。図書室」


目の前には呆れた表情の日椎が荷物をまとめていた。


ああ、そっか……俺寝ちゃってたのか。


窓の外を見れば、真っ暗な空。


「って、真っ暗じゃん!今何時?」
「21時」
「……そんなに寝てたんだ。」
「お互い様だろ。」


荷物をまとめ終わった日椎は立ち上がった。


「……何アホ面で座り込んでるんだ?帰るよ。」
「え………俺に言ってる?」
「他に誰がいるんだよ?」


日椎の眉間にシワが寄る。
てっきり声も掛けずにスタスタ歩いていくと思ってたのに。


「何、帰らないの?」
「…………帰ります。」
「じゃあ早く。置いてくよ。」



急かされて鞄を手に取る。


「アンタってよく図書室来るの?」


一緒に図書室を出て、隣に並んだ日椎は前を向いたまま訊いてくる。

こっちを見ていないのを良いことに、俺はその横顔を見つめた。


「いや課題とかレポートとかある時ぐらいかな」
「じゃあ今はレポート作成中?」
「あー、今日はそういうのじゃないよ。」
「へぇー、じゃあさ、今は特に忙しい時期とかじゃないの?」


どことなく歯切れの悪い日椎に俺は首を傾げた。


「まぁ、特にこれと言って忙しくはないけど。」
「そ。明日付き合ってほしい所あるんだけど。」


明日って土曜日………
休日にお出掛け?俺と?


「……誘う相手間違ってない?」
「俺が誘いたいのは山碼 馨ってやつ。人違い?」
「いえ、合ってます。」
「じゃあよろしく。かわし台駅に13時」


淡々と決めていく内容に、俺は呆気に取られ、


「あ、ああ」


という間抜けな返答しか出来なかった。