相変わらず図書室には人がいない。

何て言うか寂しいよな……。


図書室の奥、開けた読書スペースに、日椎の姿があった。


あ、やっぱり居た。


背中に近付きながら思い出す。

この前は怒らせちゃったし、近づく前に声掛けとこうかな。


「………日椎、」
「………………」


反応なし。聞こえてないのかな?


「ーー日椎、」


少し声を上げてみたけれど、やっぱり反応はなかった。

おかしいな………?


恐る恐る近付いて顔を覗き込む。


「寝てるし……」


反応がなかったのも当然で日椎は安らかに寝息を立てていた。

空いた窓から流れる風が日椎の髪を撫でている。

無防備に眠る顔はいつもより幼い印象を持たせている。


気持ちよさそう……。


起こさないように、静かに向かいの席に腰掛けた。

「………やっぱ格好いいよな。」


女たちが騒ぐのも分かる気がする。
男の俺から見ても整った顔立ちだ。


「そりゃー、好きになるよな……」


手を伸ばして揺れてる髪に触れてみた。


柔らかくて、気持ちいい。


頭を撫でれば頬が緩んだように見えた。


「………可愛い。」


体温に触れると、うつらうつら睡魔が襲ってくる。

あー、やば………。


心地よい風が肌に当たり、ゆっくり瞼が落ちていった。