「山碼、生きてる?」
「んー………」
「おーい、山碼ー、山碼くーん、馨ちゃーん?」
「ちゃん付けするな!って、あれ?」


目の前には珠時の呆れ顔。
可笑しいな、講義中のはずなんだけど………。


「頭にクエスチョンマークが浮かんでるから一応言っとく。講義ならかなり前に終わってるぜ。」
「あ、れ?ま、まじ?」
「まじ。なーにをそんなに悩んでんの?」


前の席に座る珠時は頬杖を付きながら、俺を横目で見てくる。


「悩んでるわけじゃねーんだけど、日椎ってよく分かんないなって思って。」
「え、今更?そんなの最初から知ってたことじゃん。」
「そーなんだけど、そーじゃなくて。」



面倒臭そうにしたり、クールそうに見えて実は結構笑ったり、それに………


“アンタが痛そうな顔するから”



あれって、俺のためって言う風にも聞こえる気が……。

ちょっと自意識過剰か。


「て言うか、なんでそんなに日椎のこと気にしてんの?」
「え、あー…何でだろ?」
「ああいうキラキラした奴は苦手なんじゃないの?」
「うーん、そうなんだけどさ……アイツって他のチャラチャラしたモテ男とちょっと違うって言うか。何か気になるんだよな。」


言い切らない俺に珠時は何とも微妙な表情をした。



「あんまり深入りしすぎんなよ。泥沼はまったら抜け出せないぜ。」
「なんだ、それ。帰るかー。」
「俺今日サークルあるんだ。」
「了解、じゃあ俺帰るわー。」

講義室を出て、何となく校内を歩く。

ふと、図書室の窓が視界に入った。


今日もいるのかな………?


そう言えばあの時の真っ白な本、あれのこと聞けてないんだよな……。


特に急ぎの用もないし、ちょっとだけ寄っていこうかな。


外へ向かい始めていた足を、図書室の方へと向けた。