「早織……早織って、まさか織田さん?」
「あ……文子、知ってるんだ」
「それは……」
それもそっか、高校一年生の時に、早織が亡くなったことは学校集会でも言ってた。
でも、時間が経つ度にみんなの記憶からは薄れて、今じゃ話題にすら上がらない。
まるで、その記憶とともに早織が生きてきた証も消えてしまいそうで……悲しかったのを覚えてる。
「あ?それって……まさか、事故で亡くなった織田 早織か?」
「……事故……ね」
――ズキンッ。
胸に刻まれた、過去の傷が痛んだ。
私が、あの日手を離さなければ……。
早織は、私のせいで……亡くなった。
事故なんて言葉ではまとめられない。
「でもお前、親友がいるんだって言ったから……てっきり今もいるのかと思ってた……」
「…………」
傍には、いるよ今も。
だけど……みんなには見えないだけ。
「いいじゃない、この話は。ほら、ご飯冷めちゃうよ」
「湊……お前……」
「ほら、ミニハンバーグもあげるから、文子も」
私は、話をそらすようにして、ミニハンバーグを海斗と文子ひおすそ分けする。
「う、うんありがとう湊ちゃん」
「味、合うといいんだけど」
そんな私を、2人は何か言いたげに見てたけど、気づかないフリを突き通した。
だって、今追求された所で、2人を納得させられる嘘なんて、見つかりそうになかったから。


