「私、湊だから……えっと、私は毒島さんのこと、文子って呼ぶね」


「え??」


「名前、さん付けだとよそよそしいから」



受け売りだけど、なんて。

私は肩を竦めながら笑う。

すると、文子は驚いた顔をしながら、泣き笑いみたいな顔をした。




「うん、嬉しい。ありがとう、湊ちゃん!」


良かった、笑ってくれた……。

こうしたの、間違いじゃなかったんだ。



「よく分かってんじゃん、湊」


「誰かさんに教えられましたから」



ニッと笑う海斗に私はそう言い返す。

その誰かが、海斗のことなんだけどね。



「文子、俺は海斗だから、よろしく!」


「え、高橋く……海斗くんまで??」




フレンドリーすぎる海斗に戸惑う文子。

そりゃそうだよね……。

この人、クラスの人気者なのに、気取ったとことか無いし。



「あの……湊ちゃん」


「うん?」



突然、文子に両手を握られて、私は目をパチクリさせる。


どうしたんだろう、文子。

急に、真剣な顔したりして……。


私は不思議に思いながら、文子の顔を見つめ返す。