「尚先輩は、それにすぐに気づいたってことだろ。そう思うと、同じクラスなのに、俺って湊の何を見てきたんだろうって落ち込んだし」
「落ち込んだって……ぷっ、変なの」
なんだか、私のことで悩んでる海斗が面白くなってきた。
本当に不思議、こんなクラスでも浮いた私のことを気にするなんてさ。
小さく笑うと、海斗は目を見開いて私の顔を凝視する。
そして、なぜか嬉しそうにニッと笑った。
「え、何?」
「いーや、こういう湊の顔を知ってるのは、俺だけかな……と」
「どういうこと?」
「いーや、教えてやらねぇ。言ったら、また仏頂面に戻るからな、湊は」
そう言って笑った海斗の笑顔が目に焼き付く。
本当に楽しく笑うんだもん。
だからかな、私もつられて笑っちゃうんだよね。
「雨もたまにはいいな、湊」
「ずっと雨じゃん、梅雨だから」
「んじゃ、今日の雨はいいな」
そう言いかえた海斗の言葉にまたクスッと笑う。
でも、私も同感だなぁ……なんて。
素直に言ったら海斗は調子に乗りそうだから言わないことにする。
「なぁ、そう思わねー?」
「まぁ……悪くはないかな」
「素直じゃねーの」
怖かったはずの水たまり、それすらも気にならない楽しい時間。
嫌いだったはずの雨が、少しだけ長く続けばいいのに……そう思った瞬間だった。