そう、あの日早織の手を離してしまった……。
後悔と、悲しみの記憶が、蘇ってくる。
「そうだ、私は……そんな、すごい人間じゃない」
「湊?」
「……私は、誰も笑顔に出来ないし、助けられないんだから」
取り返しのつかない、あの日の後悔。
それに、またズキズキと頭が痛くなる。
「そこまで言うか?湊は、謙遜しすぎだろ」
「違う……謙遜とかじゃ……」
本当に、そうじゃないんだよ……。
――ポタリッ。
流したくもない涙が流れた。
しかも、海斗がいる目の前で。
いけないっ、私泣いたりして……。
そう思った時には遅かった。
「お前……なんで泣いて……おい、大丈夫かよ!?」
驚きながら慌てている海斗に、やってしまったなと思う。
最近は、こんなふうに思い出して泣いたりしなかった。
なのに、海斗には気が緩んでしまうみたい……。


