「だって、ただで勝ってもつまらないでしょ?はい、もう決定事項でーすっ」
「はいはい、なんでもいいよ」
「じゃあ、位置について、よーい……どんっ!」
――バシャンッ、バシャッ!
早織のかけ声と共に、私達は全力で川の中を走る。
でも、結構流れが強くて、なかなか前に進まない。
「んーっ、転びそうっ」
早織がそう言いながらも、私より先を走っていて、リードしていた。
「早織、待ってよ!」
その背中が遠ざかると、なぜだか不安になる。
どこか遠くに、早織が行っしまうような……。
なんでこんなことを考えたのか、分からないけど、嫌な予感がした。
「大丈夫だよ、早く湊も……」
――ジャボンッ!!
何かを言いかけた早織の姿が、忽然と消えた。
それに、私の足もピタリと止まる。
「え……早織?」
ジャーッと、川の流れる音だけが、ただ聞こえる。
それが、奇妙な程に自然で、私は焦っていた。


